2006年 01月 27日
CASTING for <Stupeur et Tremblements>その3 |
私が初めて出演した映画のキャスティングのお話のつづき・・・
*注:話が中盤に入ってまいりました。もしも今日、初めて遊びに来てくれた方は是非とも
CASTING for <Stupeur et Tremblements>その1から読んでみてください!!
数日後、私は指定された時間に再びアランサルドプロダクションへと向かった。前回と同じ受付嬢が私の名前を聞くとまた横のソファーを指差して「そこに座って待っていてください。誰かがそこの扉から出てくるまでは待っていてください」と言った。少々早くついたからだろうか?とりあえず私はそこの扉が開くのを待っていた。待っている間、私は今からフランス映画界で巨匠といわれている人に会うのかと思ったらちょっと興奮してきてしまった。もしかしてとても気難しい人だろうか?怖い人だろうか?私の被害妄想は加速するばかりである。10分ほど経っても誰もでてこない。この扉から出てくるのはいったい誰なんだろう?誰かが出てくるまでは待っていなければならないのだ。私はソファーに座って地蔵のように硬直している。こういう時の1分1秒というのはなんて長いのだろうかと爪でも噛んでしまいたい気持ちだった。
するとその扉の向こうから何人かの楽しそうな話し声が聞こえてきてようやく扉が開いた。なんとそこから出てきたのは日本人の若い女性だった。しかも私が知っているモデルだったのだ。彼女とはそんなに気が合うとはいえなかったけれど仕事が一緒になったこともあったし2,3回話をしたこともあった。しかしその時の私達はお互いの存在を確認しあったにもかかわらず彼女は私を一瞥し挨拶することなく去っていった。私もまた彼女を一瞥し挨拶することはなかった。
その直後にアラン・コルノー監督は私の前に現れた!
(続きが気になる方はMOREを押してください!)
私が被害妄想していた映画監督像からはとうていかけ離れた人だった。少しこんがりと日焼けをしていて、明るく、元気な人だった。一番印象的だったのが彼の瞳がとても優しそうなことだった。
アラン:「こんにちは、私がアラン・コルノーです」アラン監督は私に握手を求めてきた
カオリ:「こんんちは、カオリです」
アラン監督は前回とは反対の右の扉に私を案内した。
私はアラン監督と真向かいにテーブルを挟んで座った。
アラン:「前回のビデオを見ました。実は2回目にやったほうが今回の役には近いんですよ」
黒木瞳だったのか!
私の中の久本雅美はその瞬間プイッと消え去った。
その後、アラン監督はこの話はアメリーノートン原作の「畏れ慄いて」という本をベースとしていて、日本への強い憧れを持ったベルギー人女性が日本の商社に勤めた1年間の実話であり、同じ職場にいた憧れの女上司に酷いいじめに逢うというカルチャーギャップの話で、そのいじめ役を探しているという簡単な説明を受けた。
そしてアラン監督は私に数枚の紙を渡した。
アラン:「今日は怒るシーンをやってもらいます」
カオリ:「あっはい」
アラン:「とりあえず、前回の励ますシーンもやってもらいますから向かいの部屋に行きましょう」
私とアラン監督がキャスティングルームに入るとそこにはヴァンソンとアメリー代役の日本人の女性が笑顔で待っていて前回同様、私に握手を求めてきた。
―ビデオキャステイング開始―
ビデオカメラが回る。
励ますシーンをアラン監督の指導のもと何回かやる。
アラン:「はい、結構です。じゃあ次は怒るシーンです。シナリオを見ながらでかまいません」
カオリ:「はい」
ビデオカメラが回る。
怒るシーンをアラン監督指導のもと何回かやる。
アラン:「はい、結構です」
カオリ:「はい」
あっという間に終わってしまった。しかし時計を見るとアランサルドに着いてから1時間半位経っていた。ということはどう考えても私はアラン監督の指示に必死に答えようとビデオカメラの前で軽く1時間は演技をしていたということになる。
昔、キャスティングをした時に赤い顔した自分を見つめるもう1人の自分を見た私が今日はビデオカメラが回ってことすら忘れて1時間も演技をしていたのである。
アラン:「今日はありがとうございました。また事務所に連絡します。それからっ」
カオリ:「あのっ」
私は興奮のあまりアラン監督が話すのさえぎってしまう。
アラン:「なんですか?」
カオリ:「今日はとても楽しかったです。もう本当にとても楽しかったんです」
アラン:「それは良かったです。ところでその髪はいつ黒くなるんですか?」
カオリ:「へっ?」
そう、このキャスティングはディオールのショウの直後だったから実は最初のビデオキャスティングの時から私の髪は新鮮トマトの状態だったのだ(ブログ:ジョンガリアーノからの手紙参照)私はこのキャスティングの結果も自分の髪が赤いことも忘れて、もうここまで楽しい思いをしたら何の後悔もありません!という状態にいたということになる。
いい意味で私は自分がキャスティングを受けに来ていた現実に戻される。
カオリ:「黒く染めたほうがいいですか?」
アラン:「染めてください」
私はアラン監督やヴァンソン達と別れを告げてアランサルドを後にした。
みんな「それじゃあまた近いうちに」と私に言った。こういうシチュエーションで相手が最後に言う言葉というのはやたらと気になるものなのである。
そして帰り道、踊る胸を押さえつつ1人で考えてみた。
(ちなみにこの時、私は最初に一瞥を食らわしあったモデルのことなどはすっかり忘れていた)
カオリ:「髪を黒くしてくださいということは?みんな、またねって言ってたよね」
カオリ:「決まり?」
カオリ:「いやいや、そういう感じでもなかったな」
カオリ:「じゃあ、またキャスティング?」
カオリ:「おいおい、次は何があるんだよー」
カオリ:「なんでしょうねー」
私の予感は的中した。
数日後、事務所の方に連絡があった。
1週間後の金曜日、午後3時にキャスティング
=アラン監督からのお願い=
必ず髪を黒く染めてくること。当日ハイヒールと白いシャツを着用してくること。先日やったキャスティングのセリフをすべて覚えてくること。
そしてこの1週間後のキャスティングで私は予想をはるかに上回る極度の緊張空間に放り込まれることになるのであった・・・・・
つづく 1月29日のブログその4へ
←何回キャスティングすんだよー!by ハグキ
*注:話が中盤に入ってまいりました。もしも今日、初めて遊びに来てくれた方は是非とも
CASTING for <Stupeur et Tremblements>その1から読んでみてください!!
数日後、私は指定された時間に再びアランサルドプロダクションへと向かった。前回と同じ受付嬢が私の名前を聞くとまた横のソファーを指差して「そこに座って待っていてください。誰かがそこの扉から出てくるまでは待っていてください」と言った。少々早くついたからだろうか?とりあえず私はそこの扉が開くのを待っていた。待っている間、私は今からフランス映画界で巨匠といわれている人に会うのかと思ったらちょっと興奮してきてしまった。もしかしてとても気難しい人だろうか?怖い人だろうか?私の被害妄想は加速するばかりである。10分ほど経っても誰もでてこない。この扉から出てくるのはいったい誰なんだろう?誰かが出てくるまでは待っていなければならないのだ。私はソファーに座って地蔵のように硬直している。こういう時の1分1秒というのはなんて長いのだろうかと爪でも噛んでしまいたい気持ちだった。
するとその扉の向こうから何人かの楽しそうな話し声が聞こえてきてようやく扉が開いた。なんとそこから出てきたのは日本人の若い女性だった。しかも私が知っているモデルだったのだ。彼女とはそんなに気が合うとはいえなかったけれど仕事が一緒になったこともあったし2,3回話をしたこともあった。しかしその時の私達はお互いの存在を確認しあったにもかかわらず彼女は私を一瞥し挨拶することなく去っていった。私もまた彼女を一瞥し挨拶することはなかった。
その直後にアラン・コルノー監督は私の前に現れた!
(続きが気になる方はMOREを押してください!)
私が被害妄想していた映画監督像からはとうていかけ離れた人だった。少しこんがりと日焼けをしていて、明るく、元気な人だった。一番印象的だったのが彼の瞳がとても優しそうなことだった。
アラン:「こんにちは、私がアラン・コルノーです」アラン監督は私に握手を求めてきた
カオリ:「こんんちは、カオリです」
アラン監督は前回とは反対の右の扉に私を案内した。
私はアラン監督と真向かいにテーブルを挟んで座った。
アラン:「前回のビデオを見ました。実は2回目にやったほうが今回の役には近いんですよ」
黒木瞳だったのか!
私の中の久本雅美はその瞬間プイッと消え去った。
その後、アラン監督はこの話はアメリーノートン原作の「畏れ慄いて」という本をベースとしていて、日本への強い憧れを持ったベルギー人女性が日本の商社に勤めた1年間の実話であり、同じ職場にいた憧れの女上司に酷いいじめに逢うというカルチャーギャップの話で、そのいじめ役を探しているという簡単な説明を受けた。
そしてアラン監督は私に数枚の紙を渡した。
アラン:「今日は怒るシーンをやってもらいます」
カオリ:「あっはい」
アラン:「とりあえず、前回の励ますシーンもやってもらいますから向かいの部屋に行きましょう」
私とアラン監督がキャスティングルームに入るとそこにはヴァンソンとアメリー代役の日本人の女性が笑顔で待っていて前回同様、私に握手を求めてきた。
―ビデオキャステイング開始―
ビデオカメラが回る。
励ますシーンをアラン監督の指導のもと何回かやる。
アラン:「はい、結構です。じゃあ次は怒るシーンです。シナリオを見ながらでかまいません」
カオリ:「はい」
ビデオカメラが回る。
怒るシーンをアラン監督指導のもと何回かやる。
アラン:「はい、結構です」
カオリ:「はい」
あっという間に終わってしまった。しかし時計を見るとアランサルドに着いてから1時間半位経っていた。ということはどう考えても私はアラン監督の指示に必死に答えようとビデオカメラの前で軽く1時間は演技をしていたということになる。
昔、キャスティングをした時に赤い顔した自分を見つめるもう1人の自分を見た私が今日はビデオカメラが回ってことすら忘れて1時間も演技をしていたのである。
アラン:「今日はありがとうございました。また事務所に連絡します。それからっ」
カオリ:「あのっ」
私は興奮のあまりアラン監督が話すのさえぎってしまう。
アラン:「なんですか?」
カオリ:「今日はとても楽しかったです。もう本当にとても楽しかったんです」
アラン:「それは良かったです。ところでその髪はいつ黒くなるんですか?」
カオリ:「へっ?」
そう、このキャスティングはディオールのショウの直後だったから実は最初のビデオキャスティングの時から私の髪は新鮮トマトの状態だったのだ(ブログ:ジョンガリアーノからの手紙参照)私はこのキャスティングの結果も自分の髪が赤いことも忘れて、もうここまで楽しい思いをしたら何の後悔もありません!という状態にいたということになる。
いい意味で私は自分がキャスティングを受けに来ていた現実に戻される。
カオリ:「黒く染めたほうがいいですか?」
アラン:「染めてください」
私はアラン監督やヴァンソン達と別れを告げてアランサルドを後にした。
みんな「それじゃあまた近いうちに」と私に言った。こういうシチュエーションで相手が最後に言う言葉というのはやたらと気になるものなのである。
そして帰り道、踊る胸を押さえつつ1人で考えてみた。
(ちなみにこの時、私は最初に一瞥を食らわしあったモデルのことなどはすっかり忘れていた)
カオリ:「髪を黒くしてくださいということは?みんな、またねって言ってたよね」
カオリ:「決まり?」
カオリ:「いやいや、そういう感じでもなかったな」
カオリ:「じゃあ、またキャスティング?」
カオリ:「おいおい、次は何があるんだよー」
カオリ:「なんでしょうねー」
私の予感は的中した。
数日後、事務所の方に連絡があった。
1週間後の金曜日、午後3時にキャスティング
=アラン監督からのお願い=
必ず髪を黒く染めてくること。当日ハイヒールと白いシャツを着用してくること。先日やったキャスティングのセリフをすべて覚えてくること。
そしてこの1週間後のキャスティングで私は予想をはるかに上回る極度の緊張空間に放り込まれることになるのであった・・・・・
つづく 1月29日のブログその4へ
←何回キャスティングすんだよー!by ハグキ
by karriche
| 2006-01-27 08:44
| 映画キャスティング裏話1